患者の状態の悪化に対して責任を問う経過観察義務違反

経過観察(患者管理)義務違反とは、入院中、術中、術後などの患者の状態の悪化に対して医師の責任が問われるものです。

これには、①必要な患者管理を怠って状態の悪化を招いたこと、②患者の状態の悪化を把握するのに必要な観察や検査を怠ったこと、③必要な観察や検査は行っていたが状態の悪化を見落とした、の3つのケースが考えられます。

①の「患者管理を怠って状態の悪化を招く」ケースには、褥瘡(床ずれ)の管理などの文字通りの患者管理のほか、院内感染の防止など施設管理の問題も含まれてきます。

褥瘡はいったん発生させると治療に困難をきたすため、治療が適切に行われても、褥瘡を発生させ患者に苦痛を与えた責任が問われる場合もあります。また、褥瘡の発生後に患者が死亡すれば死亡に対する責任も問われかねません。

例えば、脳出血のため入院治療を受けて位後、リハビリのために転院した先で褥瘡が生じて腎不全で死亡した男性の事案において、東京地裁は、「医療機関側がエアーマットも支給せず、褥瘡を悪化させ、褥瘡を防止すための体位の変換も怠っていた」とし、死亡した本人に対する慰謝料1,000万円に家族に対する慰謝料100万円を合わせた合計1,100万円の支払を命じています(平成9年)。

この事案は、患者の死亡と褥瘡との間の因果関係が認められるどうかについては疑問があるとされていますが、医療機関としては褥瘡を発生させ、患者がその後に死亡すると死亡についてまで責任を問われる可能性がある点を留意すべきでしょう。

MRSAなどの院内感染が問題になる事案においても、感染を生じさせた責任と感染後の治療に関する責任とに分けられます。感染防止に関しては、感染経路が問題と成り、次に感染防止のために適正な予防処置を採っていたかどうかが問題になります。

過去の判決例は、感染経路が必ずしも特定できないケースで、かつ感染防止マニュアルの策定や手洗いの慣行など、標準的な感染防止策がこうじられているか切り責任が否定され、逆に集団感染で感染経路が特定される場合は医療機関側で防止策を金と講じていたと主張しても責任を認める傾向があります。

②の「患者の状態の悪化を把握するのに必要な観察や検査を怠った」場合、それにより患者が死亡するなど悪しき結果が生じたときには、問診義務違反検査義務違反診断内容の誤りなどの過失を理由として責任を問われることになります。

問診や検査義務違反などの問題は異状を訴える患者共通の問題ですが、術中や術後、あるいは入院中の患者(特に高齢者や糖尿病などの身体的素因がある場合)の「状態の悪化」は当然予測されるため、裁判所は医療機関側の責任を一層厳しく認める傾向にあります。

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