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療養指導義務:悪しき結果を予測できる場合、医師は適切なアドバイスが必要

療養指導義務は、例えば入院患者が外泊するなど、多くは医師の患者に対する直接の管理が及ばなくなるときに、患者に対して適切なアドバイスをすべき注意義務として問題となります。

この療養指導義務は、これまで患者の「悪しき結果」を避けるための説明義務の一環として論じられてきているのが一般です。

例えば、手術後に全身麻酔剤「ケタラール」の副作用で患者が嘔吐を起こして窒息死した事案において、福島簡裁は、「手術前に絶食を保つよう具体的に指示・説明すべき義務があった」としています。

また、高血圧患者が一時外泊時に高血圧性脳出血により死亡した事案で、福岡地裁は「医師は少なくとも当分の間、厳重な安静を指示して血圧の観察をすべき義務があったのに、外泊許可の申し出をした患者に対して、外泊することの危険性を十分認識させてこれを禁じなかった」と医師の過失を認定したケースがあります。

そのほか、未熟児である新生児を黄疸のある状態で退院させた結果、核黄疸のために脳性麻痺を発症した事例があります。

このケースにおいて、最高裁は「①黄疸の増強が起こりえること、②黄疸が増強して哺乳力の減退などの症状が表れたときには、重篤な疾患に至る危険があること―を説明し、黄疸症状を含む全身状態の観察に注意を払い、これらの症状が現われた際には速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務が担当医にあった」と判断しています(平成7年)。

この療養指導義務は、医師が患者の「悪しき結果」を予測できる場合は、医師は適切なアドバイスをしておかなければ責任に問われる可能性がある点に本質があります。

入院中は医師や看護師等による持続的な観察が行なわれていますが、外泊や退院後はそれができませんので、①どのような事態が起こりえるかを説明し、②その結果を避けるためには患者は何をすべきか(何をすべきでないか)を分かりやすい言葉で伝える必要があります。

具体的な疾患が想定されるにもかかわらず、「何か変わったことがあったらすぐに診察を受けるようにしてください」という、一般的な注意事項だけを告げる対応では、医師としての責任を免れることはできません。

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