がん切除の際に輸血が必要も、患者は宗教上の理由で輸血を拒否

大学病院の勤務医です。肝臓がんの患者さんが入院してきたのですが、宗教上の信念から輸血は絶対にしたくないといっています。しかし、患者さんの治療にはがんの切除が絶対で、その際には輸血が必要となります。

病院の方針では、輸血が必要の場合には輸血をする方針で手術を行ってきたのですが、このような場合には、その方針を変更してでも無輸血手術をする義務があるのでしょうか?

もし、病院の方針を患者に説明せず、手術中に輸血を行った場合には、例え患者の命を救うためであっても、損害賠償責任を追及されるのでしょうか?

病院の方針を説明せずに輸血した場合には、損害賠償責任がある

医師には医療水準に従った相当な手術をする義務があります。逆に、現在の医療水準を考えると、他に適切な手術があるにも関わらず、生命に危険が及ぶことが予想される手術をすることは、義務ではありません。

患者が宗教的な信念から無輸血手術を望んでいたとしても、それが生命に危険が及ぶことが予想された場合には、そのような手術を拒否することは義務違反となりません。したがって、質問のケースでは病院の方針を変更する必要はありません。

次に、患者には、宗教的な理由から輸血を拒否する権利(無輸血手術を選択する権利)が、平成12年の最高裁判決において認められています。したがって、質問の例では、病院の方針を説明せずに手術を行い、例え患者の救命のためでも輸血を行った場合には、権利侵害となり、病院には損害賠償責任が認められます。

このようなケースにおいては、患者の無輸血手術を選択する権利を保障するために、病院の方針を説明した上で、患者に無輸血手術を行なってくれる病院を探す機会を与える必要があります。

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