患者の家族だけにがんを告知した場合、説明義務違反になるか?

大学病院の勤務医です。担当している患者さんが末期の肺がんで、転移も認められるため、残念ながら完治の可能性がほとんどありません。

患者さんは精神的ショックにも弱い方と見受けられたので、末期のがんであることを伝えると今後の治療に悪影響が出ると判断しました。そこで、患者さんには告知を行わず、家族の方だけに正確な病名を伝えたのですが、この場合、説明義務違反の問題は生じないのでしょうか?

医師には一定の裁量が認められており、違反でない可能性が大

医師は患者に対して病状等を正確に説明する義務がありますが、質問の例のような場合、完治しない可能性が高く、正確な病状の説明は「死の宣告」と同様の精神的ショックを与えかねません。今後の治療に支障をきたすことも考えられ、このような場合でも説明しなければならないというのは、かえって不合理といえるでしょう。

このことからすれば、担当医師が裁量によって、患者には正確な病名や症状を告知せずに治療を行ったとしても、それは許容されるものと考えられます。ただし、家族には、患者の病状を正確に伝え、治療法法の選択等についても十分に意思の疎通を図る必要があります。

ただし、患者は余命が限られていることを知らされることにより、残された日々をどのように生きるかを自分で決定することも可能である、ということも事実です。そんななか、医師の裁量の下、病名を告知せずに、人生最後の場面で患者の自己決定権を奪ってもよいのかという考えもあります。

医師の裁量権と患者の自己決定権とが衝突する場面で、双方をどう調和させるかというのは非常に難しい問題で、永遠のテーマかもしれません。

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