医療過誤を刑事事件として取り扱う場合の問題点

近年、医療過誤において刑事処分が優先となる背景には、被害者と家族からの告訴があります。

被害者は、事故の前の状態に戻して欲しいという原状回復をはじめ、真相究明、反省・謝罪、損害賠償の5つの願いを持っています。

しかし、これらの願いは、医療事故の密室性、情報の偏在化などが壁となって、容易にはかないません。そのため、被害者の願いは、やり場のない怒りに変わりやすく、その結果として、刑事告訴に向かう傾向が見られるのです。
ただし、医療過誤を刑事事件として取り扱うには以下のような問題点があります。

1.医師は、その結果に確信が得られなくても、一刻を争う命の現場のなかで、そのときに最善と思われる医療行為を取捨選択しなければならないという性質を持っています。ところが、患者に重大な結果が生じた場合には、結果から遡って過失の有無を検討するため、結果回避義務を認定されやすく、処罰が拡大するという恐れがあります。

2.刑事処分が下るまでには、長い時間を要するため、その間被害者家族にも死亡原因も明確にならないまま経過し、医師も被疑者という不安定な立場が続くことになります。

3.昨今のチーム医療においては、様々な医療従事者が異なる役割と医療行為を行い、それらの相互作用を持って高度な医療行為を提供しています。従って、チーム全体の分析ができなければ、原因究明はできず、個人の責任を問う刑事責任では、適切な処理が困難となります。そのため、被告人の選定も不適切なケースも見受けられ、刑事判決の事実認定は、医療従事者の実感と乖離しているケースも少なくないのです。

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