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薬剤の副作用に関する事例が多い医師の問診義務違反

診断の過程で必要な問診を怠った「問診義務違反」はさらに①診断上必要な問診を怠った場合と、②いわゆる"悪しき結果"を避けるための問診を怠ったという2つに分類することができます。

①は診断ミスの前提として問診義務違反が論じられる場合であり、その結果、必要な治療等が遅れたことについて責任の追及を受けます。

問診義務違反が単独で医師の責任の根拠とされる多くのケースは、②の"悪しき結果"を回避する場面で問診を怠った場合で、なかでも投薬の副作用の事例が多くなっています。

例えば、医師がアスピリン喘息患者に対して鎮痛解熱剤「ボルタレン」を投与した結果、患者がショック死した事案において、広島地裁は「医師は事前にアスピリン喘息の確定診断を図る必要があり、その場合にアスピリンの吸入試験を実施することは当時まだ評価が確立していなかったことから義務とはいえないまでも、それに変わるべき詳細な問診を行うべきだったのにこれをしなかった点に過失がある」としています(平成2年)。

投与の際の副作用に関する問診義務は、当然、医師に副作用についての予見可能性があることが前提となり、その時点の医療水準で当該薬剤の副作用が予見できない場合には、問診義務の範疇からは除外されます。

問診義務違反の有無は、医師が患者から該当薬剤の副作用に対応するアレルギーなどの既往症などを患者から聞きだすに十分な質問をしたかどうかが重要になります。

したがって、実際の問診にあたっては、①.薬剤の名前と副作用、その結果どういう"悪しき結果"が生じる可能性があるかを説明のうえ、②.その薬剤の副作用が生じうる体質であるか、③.同系統の薬剤について過去に副作用が生じたことがないか、または医師から指摘を受けたことがないか、④.同系統の薬剤の投与を受けたことがある場合にはその時の状況、薬剤名を確認する必要があるでしょう。

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