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医療ADRは患者と医療者の話し合いを通じて、柔軟な解決策を導き出します

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、訴訟手続きによらない紛争解決の方法のことです。一般的に紛争の解決には、当事者による話し合いと裁判による判決の2つがありますが、その中間に位置するのがADRです。

裁判と異なり時間や費用が掛からず、手続きが比較的簡単という利点があり、医療訴訟が増え続ける近年、医療事故をめぐる患者と医療者の紛争が起きたときの民事訴訟とは別の形の解決法として注目されています。

医療過誤をめぐる裁判は一審判の判決までに約2年を要するうえ、患者側の勝訴率(認容率)は約20%と一般の民事裁判に比べて大変低くなっています。仮に医療機関の責任を認める判決が出た場合でも、医療機関がその判決を是としなければ控訴が待っています。最高裁まで行けば10年近くの年月がかかります。

その間の患者の精神的、経済的負担は計り知れず、訴訟を提起することに躊躇してしまうケースは少なくありません。患者の立場で見ると、裁判が終わっても決着がつくことは法的なことのみで、納得のいく結果がもたらされることは少ないと言えます。

ADRでは、そうした医療裁判での問題点を踏まえ、裁判で問題の法的解決を目指すのではなく、患者と医療者双方の感情的な面も含めて当事者間の対話による解決を目指す制度です。

医療ADR 民事訴訟
短い(半年程度) 審理期間 長い(一審判決まで2年)
安い 費用 高い
当事者が決定 スケジュール 裁判所が決定
なし 法的拘束力 あり

従来、医療紛争は一般の紛争と同様に、ADRを実施する全国の弁護士会の仲裁センターで扱ってきましたが、2007年に東京の三弁護士会が合同で「医療ADR」を新設し、現在では全国の弁護士会に広がっています。

医療ADRの特徴は、患者と医療機関の双方に医療訴訟、医療紛争に精通した弁護士が、斡旋人として関与することです。裁判のように勝訴or敗訴の2択ではなく、当事者の対話から双方の歩み寄れる範囲内で解決を目指すので、解決の内容はより柔軟なものになります。

解決には当事者の合意が必須となるので、医療機関が手続きに応じない場合には進めることができない、合意に至らないなどの限界がありますが、手続きは迅速で裁判に比べて短期で終わるため、患者と医療機関の双方の負担が少なく、事案によってはADRの方が向いてます。

例えば、医療機関が手術ミス等の過失を認めているものの、損害賠償の額で患者側と折り合いがつかない場合などは、医療訴訟に詳しい弁護士が斡旋人となることで、妥当な金額に向けて対話が進むことが期待できます。歯科医療や美容整形など、裁判で仮に医師の過失が認められても損害賠償金が少ないケースもADRに向いているかもしれません。

逆に医療機関が過失や因果関係を否定している場合は、対話による歩み寄りは困難となり、ADRではなく民事訴訟による解決を目指すのが一般的です。

医療ADRのほかにも、裁判所の調停委員が患者と医療機関との間に入って話し合い進める「民事調停」を求めて簡易裁判所に申し立てを行うという方法もあります。

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